約 4,359,160 件
https://w.atwiki.jp/open2chkotewiki/pages/22.html
【GameMaster】 提供 Vikipedia 移動先 案内、 検索 基本情報 コテハン名 【Game Master】 トリップ ◆o.fS2EE6u6 レスの属性 煽り SS 活動開始時期 2014年 出身板 ニュース速報VIP板 主な出現スレ なりきり SS 別コテハン 黒珈琲 レーティング 0.00 (0 票) 【Game Master】 (ゲームマスター)は、おーぷん2ちゃんねる内の 主にニュース速報VIP板で活動していたコテハン。 概要 2015年1月にコテハンデビューした。 尊大な口調のレスで、世界は自分を中心に回っていると考えているのが特徴。 なりきりゲームスレを立て、他のユーザーと交流を取ることがある。 しかし、自分が飽きてしまいスレを放棄する場合があるため、評価は芳しくない。[1] 引退 2015年10月18日、コテハンによるおーぷん2ch自治組織「Numbers」設立を提唱する。 しかし、規制を受けたことにより組織としての活動を断念した。 同時にコテハンを引退し、SS書きとして活動することを宣言した。[2] 脚注 ^ 2015年2月16日「【バトルロワイアル】能力を授けるから廃れた学校で戦え」より出典 ^ 2015年10月18日「おーぷんの頂点に君臨してるGMだけどコテハンちょい集まってくれ」より出典 「https //2ch.me/vikipedia/index.php?title=【GameMaster】 oldid=4648」から取得 カテゴリ おーぷんVIPコテ名鑑 案内メニュー 個人用ツール ログイン 名前空間 ページ 議論 変種 表示 閲覧 ソースを表示 履歴表示 その他 検索 案内 最近の更新 今後の更新予定一覧 おまかせ表示 練習用ページ アナリティクス コテハンの一覧 ニュー速VIP ニュー速VIP+ ラウンジクラシック 自己紹介板 Open2chVIP 2ちゃんねる(その他) その他一覧 Vikipediaの項目一覧 過去の煽り合い レスの属性 煽りに関する理論 2ch外のサービス 用語・慣用句 コテの組織 コテ評価 VIPコテ史年表 コテハン流行語大賞 コテハンSSの一覧 おーぷんVIPコテ年表 ページの短縮URL https //2ch.me/vikipedia/?curid=1206 ツール リンク元 関連ページの更新状況 特別ページ 印刷用バージョン この版への固定リンク ページ情報 このページの最終更新日時は 2015年11月23日 (月) 08 15 です。 �c�C�[�g このページは 204 回アクセスされました。 プライバシー・ポリシー Vikipediaについて 免責事項 モバイルビュー
https://w.atwiki.jp/galgerowa2/pages/567.html
OVER MASTER (超越) 7 ◆Live4Uyua6 ・◆・◆・◆・ 連絡通路に響く足音は6つ。神崎黎人とその秘書、そしてランクAを含む警備員4名。彼らはミコトの部屋に向かっていた。 秘書は神崎に心配そうな眼差しを向ける。 「……あの、アリッサ・シアーズに関しては、本当にお咎めなしで宜しいのでしょうか」 「僕も彼女があんな愚行をしでかしたのは、ちょっと驚いたよ。 でも、シアーズは重要なパートナーだからね。彼らに退路を残しておいた方が良いのさ。 ただし、今までのようには好き勝手に資源を利用させないけどね」 神崎は邪悪な笑みを浮かべている。彼にとって、今回の議会は予想以上の成果だった。 シアーズの当面の反乱を封じた上に、彼らの秘密兵器を掌中に収め、更には一番地重鎮の支持も取り付けられたのだから。 確かに、神崎は一番地統合幕僚長よりも権力も権威も上だ。だが、星繰の儀に失敗した瞬間に、黒曜の君は唾棄すべき存在に成り果てる。 それ加え、ナイアの『安易に交渉するな』という釘刺しは、神崎のでっち上げである。 実際、半信半疑の人物も少なくはない。 ゆえに、一番地の連中は早々に儀式遂行を諦め、一番地統合幕僚長を神輿に反乱を企てる危険もあった。 あの古老が物の分かる人間で本当に良かった。万が一の敗戦処理は彼がしてくれるだろう。 神崎は部下達の生死にさして慈悲は持たない。でなければ、彼らの意思を奪ってまで戦場に駆り立てるなどできるものか。 ただ、王のちょっとした勤めを果たさないほど怠惰でもないだけだ。 (もっとも、あの男が旧来の態度を取り続けるなら、その場で全員に言霊を掛けざるを得なかったがな。 アリッサ不在で言霊を仕掛けるには丁度良いチャンスだった) 神崎はナイアの時の逆流を受け入れた時、一度死んだ自分に失うものなど何もないと思っていた。 だが、一度取り戻したものをもう一度奪われるというのは、実際に味わうとかなり堪えるものだ。 特に最も信頼していた炎凪の裏切り、その痛みを咀嚼するように味わった。 これからも、自分が何かをしくじれば、更に多くのものを失っていくだろう。ゲームはそのように仕組まれているのだから。 これがセカンドチャンスの代価と言う訳か。 だが、彼にはゲームを続けることに不思議と恐怖はなかった。 失うものの重みを知るたび、寧ろ、それを生み出した世界が愛おしくなった。 己の全てを賭してでも、勝利をつかみたい、そして世界をこの手に収めたい。 自分がそれだけの器であることを、この場で証明したいという気持ちが高まってくる。 だから、神崎は今、とても充実していた。前回の儀式は問題にならないくらいに。 それとは対照的に秘書はくたびれた顔付きで神崎に物言いをする。 「ですが、彼女が黒曜の君を殺さないか、ハラハラしましたよ」 「僕の戦闘力を過小評価しないで欲しいな。少なくとも、その場から生き延びる自信はあったよ。 もっとも、シアーズは全力で彼女の暴走を止めるだろうけどね。 彼らだって万能じゃない。だからこそ、一角獣を試みたのだろうし」 確かに、シアーズ財団の技術力は一番地に勝っている。彼らなしにHiMEを狩るなど到底無理だ。 だが、彼らは人材の絶対数に乏しく、必要なエネルギーや資源の多くを一番地に牛耳られている。 結局、シアーズは幾ら人工の黒曜の君を仕立てようと、一番地の力なしには儀式の完遂ができないのだ。 だからこそ、彼らは神崎だけを倒して、一番地のリソースを丸ごと手に入れるつもりだったのだろう。 「黒曜の君、そう気楽に言わないでくださいよ。一角獣の件だって、下手したら冗談で済みませんでしたよ」 「支配者は目的を遂行するため、時には大胆でなくてはいけない。有事には尚更ね」 神崎は秘書にお茶目にウィンクする。一角獣とは、シアーズによる神崎黎人暗殺計画のことをさす。 これは暗殺者の一人、真田紫子が、一角獣のチャイルドで幻を見せられることに由来する。 ただ、神崎の知るあのシアーズのシスターは、慈悲深くHiME同士の戦いに批判的であった。 なぜ、あのような選択をしたかは、今となっては死人に口無しである。 神崎が暗殺を返り討ちにできた理由、それは九条むつみの残した内部資料により、計画を事前に知っていたためである。 彼女は恐らく、神崎に不穏の種を植えつけることで、主催側の消耗を誘うつもりだったのだろう。 だが、神崎は敢えてシアーズの暗殺を誘って退け、彼らを生殺しにすることに成功した。 ただ、主催側を基地に縛り付けたと言う意味では五分五分か。 それに加え、反抗者側もあの様子だと、数日は攻めてこないはず。 不謹慎だが、しばらく裏切りを気にせずに羽を伸ばせそうだ。 無論、彼は慢心しない。与えられた時間を有効に活用し、こちらの勝利を磐石のものにするつもりだ。 (それでも、暇を見つけて、ミコトに稽古を付けるくらいは許されるか) ・◆・◆・◆・ T字路を右に回り、目的地に半ば差し掛かった刹那、霊剣弥勒が神崎に訴えた。 近くに人工HiMEがいる。念のため警戒する神崎。警備員も周囲の状況を探り始める。 すると、通気口からひょっこりと顔を出す短髪の少女、エナジー全開で、食いしん坊で、純真で、兄上想いな女の子。神崎は苦笑する。 修理中のエルザはともかく、警備隊は何をやっているのか。セキュリティーのザルさ加減を改めて思い知り、更に苦笑。 まあいい、弱点も承知の上で決戦場に選んだのだ。それにもう手は打った。 ミコトも神崎の存在に気付いたようだ。猫のようにしなやかな動きで穴から這い出すと、安堵の笑顔を見せて飛びついてきた。 「ようやく見つけたぞ、私の兄上!」 「僕の愛しいミコト、勝手に部屋から出たら駄目じゃないか。外にはお前を騙そうとする人間でいっぱいなんだよ」 神崎は少し困った様子を見せながら、彼女についたゴミを軽く払う。 だが、ミコトはそれところではないと言う様子で、真顔で迫っている。 「私はどうしても我慢できなくなって、頑張って抜け道を探してきたのだ。兄上、悪い奴に襲われなかったか?」 実は、神崎は暗殺者に襲われる少し前に彼女の部屋に立ち寄っていた。 ミコトは嫌な予感がするから一緒に行くと言って聞かず、彼は苦労してそこを後にしたのである。 「ミコト、僕の心配をしてくれてありがとう。このペンダントが僕を守ってくれたよ」 彼はそう言うと、自分の首に掛かった装飾品を示した。 それはガラス玉に紐を通したシンプルな首飾り、古代日本の意匠を再現している。 もう分かっただろう。かつて生き別れになっていた兄妹のお揃いのペンダントだ。 祖父は野心のためにミロクを持ち去り、赤子のミコトと共に一番地から姿を消した。 ミコトは人里離れた地で、強いHiMEになるための厳しい修行を受けて育った。 父は一番地の繁栄のため、黎人を神崎家の養子に出した。黎人は黒曜の君になるために大切に教育された。 この兄姉は互いに会うことを望み、何度このペンダントに見入ったことだろう。 (ならば、互いの首飾りの僅かな違い、見間違うことなど断じてあるものか) 神崎は部屋を発つ前に、ミコトにせがまれてペンダントを入れ替えていたのだ。 だからあの時、ミコトがミコトのペンダントを持っている訳がなかった。要するに、間違っているのは幻影の方ということになる。 神崎は幻影の矛盾を見抜き、真田紫子の返り討ちに成功した。確かに、エルザという保険は掛けており、紫子に殺される危険は乏しかった。 だが、あのまま幻に捉えられていたなら、会議の出席は諦める羽目になっただろう。 シアーズが計画に絶対の自信を持っていたのも頷ける。 それにしても、幻に出てきたのがミコトとあの神父とは、彼は思わず拳を強く握り締めた。 「兄上、ぼうっとして、どうしたんた……もしかして、怪我をしたのか?」 ミコトは鼻をくんくんさせると、神崎の上着を捲り、シャツに顔を突っ込んだ。 唖然とする付き人たち。神崎はちょっと驚いた様子を見せるものの、彼女のなすがままにされていた。 ミコトはシャツから顔を出すと、大きな目を更に見開いて声を上げる。 「やっぱり、左肩に包帯が巻かれているぞ。さっきは思いっきり飛びついてすまなかった。 兄上を傷つけたのは誰だ。私がそいつを懲らしめてやるぞ」 彼女は神崎の服から身体を出すと、背中の刀を抜き、構えてみせた。神崎はその場で静かに諭す。 「ありがとう、僕の愛しいミコト。これ位の傷ならすぐに治るから大丈夫だよ。 今はとても難しい状況になっていて、あまり騒いで余計な争いを起こしたくないんだ。 だから、あの傷はここだけの秘密にしてくれないかな」 神崎は人差し指と唇を交差させる。彼女は好物のイチゴ大福をお預け食らった時の様な顔で、擬似エレメントをカムツカに収め直した。 「兄上、それは遠慮ではないのだな?」 「平和なのもいいものだよ。でも、いつか必ず戦いの時が来る。辛いとは思うけど、それまではあの部屋で待っていてくれないかな」 神崎はミコトの髪をそっと撫でる。彼女はうっとりした表情で彼を見つめる。今のミコトは、ただ、兄だけを見ているのだろう。 彼もまた彼女を深く愛している。だが、儀式のため、王の器として、他の勤めを果たさねばならない。今もまた、別のことを考えていた。 (アリッサ・シアーズはシアーズ参謀本部長をなぜ殺した?) あれは単に彼女の気紛れが起こした暴走だったのか。それともこちらを欺くための演技なのか。 シアーズが暗殺にアンドロイドを使った時点で、アリッサも神崎に従うフリをしていただけなのは見当がついていた。 彼女は自分を愚かに見せることで、何か特別な計画を隠そうとしているのかもしれない。 だが、その代償があまりにも大きすぎる。あれではクーデターや暗殺、HiMEの拉致を諦めたようなものだ。 彼らはこの状況でどうやって、星詠の儀を乗っ取るつもりなのか。何か裏がある気がする。 だが、神崎黎人は恐れない。所詮、シアーズ財団といえどもナイアの配置したコマ、対等なプレーヤーだ。 相手がこちらの裏を掻くなら、こちらはその一枚上をいけば良い。それにまだ、強力な支給品が2つ残っているのだ。 ミコトはちょっと照れた様子を見せ、意を決したように言葉を吐いた。 「分かった、我慢する。だから、その……部屋に戻るまで、兄上と腕を組んで歩いてもいいだろうか?」 神崎は微笑むと、無言でそっと右腕を差し出した。ミコトは緊張しながら、自分の腕を兄の腕に絡ませる。 ・◆・◆・◆・ 「兄上は大きいな。舞衣よりもガッチリしていて、ジイよりも温かい……」 ミコトは神崎に身体を預けてしんみりと呟く。彼女に普段の跳ねる様な足取りはなく、今ある幸せを一歩一歩踏みしめているようだった。 神崎もミコトの歩幅に合わせてゆっくりと歩く。 「ミコトは二人とは仲良くやっているかい?」 「エルザは私の遊びや修行に付き合ってくれるいい奴だ。だが、すずは私をコドモと馬鹿するだけでなく、兄上の悪口まで言うから嫌いだ」 「誰しも相性の良し悪しはあるものだからね。そういう時は、相手の良いところ探しをすると良いよ。 彼女も大切な人を守りたくて必死なのは分かってやって欲しい」 「そうなのか、アイツはそんなことは一度も言ってなかったぞ」 ミコトは大きく目を見開いて驚いている。純真な彼女でも、頑なな妖の心を開くに至らなかったようだ。 まあ、今となってはその方が好都合なのだが。今度はミコトの方から話題を振ってきた。 「……兄上、私が奈緒と戦った後のことを覚えているか?」 「ああ、覚えているよ。舞衣を守るために良く頑張ったね」 それはミコトがこの世界に連れて来られる前日、つまりは黎人に兄だと告白される少し前のことだ。 彼女は年上の親友、鴇羽舞衣と一緒に買い物を楽しんでいた。そこに突然、結城奈緒とその大蜘蛛のチャイルド、ジュリアが襲い掛かってきた。 だが、舞衣はHiMEの戦いに消極的で逃げようとするばかりだった。だから、ミコトはひとりでジュリアを撃退した。 確かに、その結果、奈緒の想い人も命を落としたかもしれない。 だが、ミコトは優しい子だ。戦いがどんなに人を傷つけ、悲しませるかは分かっていた。 その上で、彼女は舞衣を守るために刀を振るったのだ。その行為は褒められこそすれ、咎めるべきことではない。 その日、神崎はたまたまミコトと遭遇し、事情を聞いて素直にそう思った。 「舞衣はあまり良い顔をしてくれなくて、私は落ち込んでいた。でも、兄上だけが、私の気持ちを理解してくれた。とても嬉しかった」 床が歩く歩道に変わる。二人は足の動きを止め、目的地まで身を任せる。 神崎は先程の幻影を想起し、そして思う。ミコトの眼差しはいつでも真剣で嘘偽りがない。 だが、自分の嘘、そして祖父の死因に気づいた後も、同じ気持ちを抱いてくれるだろうか。 結局、言霊を使わなくとも、彼女を不純な手段で縛っていることに変わりない。 彼にも妹を騙し続けることに罪悪感はある。いっそ、全てを曝け出したい誘惑もある。 彼女なら、神崎黎人の妹なら、それでも自分を愛してくれるかもしれない。 だが、王の大儀を果たすためには、不確実なことはできない。 時に最愛の身内でさえ騙し、利用し続けなければいけない。 国とは私物、されどそれを公と見立てられぬ者に王の資格はないと教えられてきた。 彼はそのために進んで耐えることのできる器――だからこそ孤独である。 その時、ミコトは神崎の腕をぎゅっと握り締めてきた。 「だから、私は絶対に裏切らない。私は兄上のために戦うんだ。残った私までが兄上から離れたら、兄上は独りぼっちになってしまう。 やっと、兄上に出会えたのに離れ離れになるのは嫌だ。兄上が死んでしまうのは嫌だ」 もしかして、神崎の抱いた感情を読み取ったのだろうか。 ミコトは自由奔放で恋も知らぬ少女なのにこういうことはやたら鋭い。 神崎はミコトの滲んだ涙を指でそっと拭い、嬉しそうな様子を見せながら言った。 「大好きだよ、ミコト。大丈夫、みんなきっと上手くいくよ。 ……そうだ、明日、僕の剣の稽古に付き合ってくれるかな?」 「兄上、本当か。私は兄上に会ったら、剣を教えて貰いたいと、ずっと思っていたのだ」 ミコトは曇った顔を笑顔に変えて、本当に楽しそうに語る。 彼女は幼い頃から、兄上に会えたら、一緒にどんなことができるか色々考えていたのだろう。 だが、神崎の孤独を癒すのは、ミコトをミロクで突き刺し300年間封印することだけ。 これによって、彼は王としていつまでも彼女を守り続けることができる。 それはもはや人のしがらみから逃れた嘘偽りのない純粋な関係。彼はこのより捻じ曲がった手法をそう捕らえていた。 彼は神崎家に養子に出されてから、ずっと願い続けている。紫子の幻から抜け出した時、その思いは益々深くなった。 (ミコトこそ、真の幸運の女神だ。彼女ほど神崎黎人の妹として相応しい器などない) 「兄上、この基地は嫌いだ。儀式が成功したら、一緒に食べて話をして二人で仲良く暮らそう」 「そうだね、僕も楽しみにしているよ」 だが、彼女の夢は絶対に適わない。彼にはナイアの契約がある。 すべての人工HiMEを殺して儀式を成功させる以外、故郷に戻る術はないのだから。 ・◆・◆・◆・ ▼とある研究員のドキュメント2 ――『異界の悪魔を統べる方法』 多くの平行世界において、人々は究極の答――あらゆる事象の発端、万物の始まりにして終焉の知識。 要するにアカシックレコードや根源の渦を求めている。 言峰綺礼の参加した聖杯戦争も、本来は根源の渦への到達手段だったらしい。 彼の世界には根源の渦から帰還し、強力な魔法を手に入れた者もいるとか。 シアーズ財団もまた究極の答を求めていた。ただし、究極の問――究極の答をどのように解釈し、何のために扱うか、と共にである。 単に強大な力だけ手に入れても宝の持ち腐れだったり、力に溺れて破滅するだけだ。 ただし、論理学の範囲では、全知は存在しないと証明されている。そのため、究極の問と究極の答は両立できず、矛盾を起こしてしまう。 だが、媛星の本質は想いの力、願いの力、想像の力、理屈を超えた力であり、言ってしまえばなんでもアリだ。 そこで、750万回儀式を繰り返し、宇宙自身の限界の補集合たる知の明晰な理解を得、 ――⊿§ΥΙ√∵☆£+∵∑o Ф♭▼膈○㌘%仝±×、すなわち人生、宇宙、すべての答えは「42」 それは矛盾、不条理、狂気、あらゆる混沌を解釈し、鎖につなぐ至高な知。 その時、かの異界の悪魔、人類を奈落に引き釣り込もうとする存在すら我らの前に跪くだろう。 これこそ、72柱の悪魔を統べしソロモン王の時代から、 石工職人ギルド、ヨーロッパ騎士団、そして、シアーズ財団に脈々と受け継がれし結社の理念だ。 と、アリッサが大見得を切っていたが、750万とか無茶苦茶である。 一体、何人虐殺すればいいんだ。途中で悪魔とやらに気づかれるのは確実だ。 天使でも探して助力を請うのか、それとも無数の平行世界のシアーズ財団と協力して人海戦術で仕上げるのか。 たぶん、総帥はそこまでやるつもりは無くて、交渉カードか何かに使う気なのだろう。それか派手なことが好きで、単に威勢を張りたいとか。 この手の駆け引きは複雑怪奇で、技術畑の自分にはよく分からない。 とにかく、あの黒幕とはそれ位大胆でないと掛け合えないのだろう。私は今、自称幸運の女神の恐ろしさを肌で強く感じている。 ・◆・◆・◆・ 言峰綺礼には自分に還る欲望がない。他人を不幸にするのは好物だが失敗しても構わない。 彼にとっては、誰が死のうが生きようが世界が滅びようが、邪神に宇宙を侵食されようが等価値だ。 だが、この男にもただひとつだけ、人間として正の喜びを感じる瞬間がある。 彼は悪鬼と鬼神と深きものを魔女の釜で超融合させ、花椒!豆板醤!甜麺醤!その方程式によって導き出される答えは邪神マーボーだ! な料理を額に滲む汗を拭うのも忘れ、口から胃袋へと放り込んでいる。 (言峰神父、もう食べ終わったかい。第二幕のために、どうしても伝えたいことがあるのだけど、時間は空いているかな) 声だ。不可視の回路が延びて、接続が生じ、何かが語りかけてくるような感覚。 麻婆の求道者が陶器の皿に蓮華を置き、ぼさぼさの髪を掻き分けた時、それは起きた。 幸い、言峰はこの手の経験はサーヴァントとのやり取りなどで慣れていた。 彼は一瞬、眉をしかめたものの、すぐに事情を呑み込み、念話の主に思念を送り込む。 (その聞き覚えのある声は、という表現も可笑しいが、ナイアかね……随分と惨めな姿に成り果てたな) 彼は人気のない食堂で、テーブル越しにそれを見下した。 (ああ、僕は一応、舞台から降りた身じゃない。周りに影響を与えちゃいけないんだよね。 それとも、ブラックマンとか暗黒のファラオとかアスモデウスとか、いっそ、巨大ロボットで登場して欲しかったかな?) ナイアは植木鉢の陰で、ハツカネズミの尻尾をぴょこんと立てる。 (私の関心は上辺ではなく本質、その魂だ。意思疎通さえできれば何も問題はない) 言峰は不敵な笑みを浮かべる。実際、彼ならどんな異形を目の当たりにしても、発狂しないかもしれない。 あの白い小動物は真っ暗な瞳で、長身の神父を見上げていた。 (ふふ、隙あらば、神すら問い殺さんとする瞳、素敵だよ。 シアーズ総帥も君くらい肝が座っていたら良かったのに。彼は僕が少しばかり『自己紹介』したら、観客席に身を引く体たらくさ。 君は赤い靴に魅入られて死ぬまで踊ってくれないのかい。ああ、つまらない。残念だよ) ナイアは一切の発声器官を用いずに軽く嘆いてみせる。これは言峰にとって既知の情報だ。だから、彼女の言動はゲーム干渉には当たらない。 (随分と未練があるようだな。だが、君の力をもってすれば、箱庭へ強引に連れ込むのは容易いと思うが) (だって、僕は総帥サマの采配に惚れ込んでいるんだよ。 あの左手で悪魔と契約を結び、右手で平然と聖水を買い求める強かさ、彼の自由意志に任せずにはいられないじゃないか。 事実、ここに送られた連中は、期待通りユニークな強化作戦を実行してくれたからね。 まあ、もし彼らが無能だとしても、代わりにあの怪物――おっと) フローリングの床に甲高い炸裂音が木霊した。ナイアは穿鋼の突きを紙一重で回避、反対側の壁に爆走する。 「汚い、ねずみ、汚い、ここには畜生にくれる食べ物はないアル!」 清掃婦がモップを上に構えてネズミを追いかけている。 外見は言峰行きつけ中華飯店の店主の外見年齢を2倍、ウェストも2倍した感じだろうか。 ナイアはルール遵守のためか己の美学のためか、ネズミの身体能力だけで、あの般若から逃げ回っていた。 (これがかの文豪の語る、神の自制の奇跡というものか。実際に目にできるとは運がいい) (あはは、そこまで大層なモンじゃないけどね。僕はスキンシップに飢えるただの寂しがり屋さんだよ) 言峰は一人と一柱の喧騒を横目に、しれっとした顔で口を拭き、ナプキンをくしゃくしゃにして置いた。 ホモ・サピエンスが齧歯類の敏捷性に敵うべくもないが、この清掃婦も シアーズの女虎と呼ばれた女だ、戦況は一進一退を繰り広げている。 「ああっ、ちょこまかちょこまか嫌らしいねずみアル!」 ついに、涜神的な鬼ごっこ終幕だ。ネズミは柱を伝って天井裏に駆け上がった。清掃婦は下で地団太を踏んでいる。 ナイアは最後に一度だけ、言峰の方を振り向いて、 (そうそう、神父サマに伝えたかった言葉はね――君は自由だ、好きにしていいよ) ・◆・◆・◆・ ▼とある研究員のドキュメント3 ――『怪物Xの正体』 私はとんでもない仮説を閃いてしまった。しかも、幾多の観測はこの説を裏付けているようなのだ。 もし、それが本当に真実だとしたら、第二幕は一番地の完全な出来レースではないか。黒幕は相当な悪趣味としか言いようがない。 ――テキストファイルはここで終わっている。彼はシアーズ技術総括に呼び出されたらしい。続きを打ち込むはもう暫く後になることだろう。 ・◆・◆・◆・ 防音壁には剣と羽に絡みついた蛇が掲げられていた。これはシアーズ財団のシンボルのひとつであり、無限の知性を表している。 だがそこでは、象徴とは程遠い罵声が空気を揺らしていた。 「神崎に情報を流したのは誰だ、裏切り者のむつみか。それとも何処ぞの間抜けがハッキングされたか。 まさか、お前じゃないだろうな。俺は前からお前には人として、基本的な部分に欠けていると思っていたのだ」 シアーズ技術開発総括は、擬似エレメント製造プラントに入るや否や、適当な部下を捕まえて溜めこんだ愚痴を吐いている。 一番地がこちらの状況をどれだけ把握しているのか不明。 むつみが神崎に情報を提供したのかもしれないし、それとは別に内通者がいるのかもしれない。 この状況で迂闊に動けば足元を掬われるだけ。彼のストレスは蓄積する一方だ。 アリッサはその様子を見て、背の高い椅子に腰掛けたまま眉をひそめた。 なんともくどい。人は一時の恐怖や動揺に流されすぎる。そのせいで自分は奥の手を演じる羽目になってしまった。 それがシアーズ極東代表の殺害である。彼の死は元の世界にそれなりの影響を与えるだろうが、媛星のためなら些細な代償だ。 ―― 一番地に有能な味方を演じ切れなくなったら、無能な敵を演じろ シアーズ総帥は構成員達を箱庭世界に託す前に、彼らにこのように命じていた。 ただ、それはアリッサの人工頭脳にも高度な処理であり、まして海千山千の猛者を欺くのは困難だ。 たとえば、深優はクラスで成績2番を演じていたのだが、それは担任にも分るほど不自然なものだった。 そこで彼女は手っ取り早いカモフラージュとして、身内を殺害することにした訳だ。 アリッサは総帥から裏切り者を処刑する権限を委託されていた。 そして、シアーズ極東計画代表は、言霊で洗脳されていたとは言え、組織を裏切っている状態だった。 そのため、あの程度の暴走で他の幹部から咎められることはない。 アリッサはシアーズ本部直属になっており、どのシアーズの派閥からも中立である。 また、このゲームが終われば解体される予定になっている。 ゆえに、誰かを殺してもしがらみを生みづらく、始末人としては色々と都合が良い。 アリッサはこれ以上、後ろの喧騒に留めることもなく、端末にアクセスする。 複数のウィンドウが開かれ、常人に目視できない速度で動画データが再生されていく。 ▼RECORD・102▼ 場所は射撃訓練場。射撃手は男女合わせて4人。拳銃で50m先の的を連続で打ち抜いている。 彼らの実力を過去のオリンピック種目に当て嵌めれば、本戦出場できるかも怪しい成績である。 だが、彼らはただの研究員で、その銃経験が休日にサバイバルゲームをする程度と聞いたらどうだろう。 そう、彼らの持つ銃こそ、身体能力を向上させる、新・擬似エレメントなのだ。 その形態はリボルバー、弾数は無限、半透明の真空弾を発射する。 念じるだけで、その威力を人に激痛を与えるレベルから、コンクリートを穿つことまで自由自在。 更には飛距離も任意な上、熟達すれば軌道を微妙に変えることさえできる。欠点は8発撃つ度にリロード操作の必要なことくらいだ。 一番地最強の暗殺集団がこれを手にした時、かの亡霊暗殺者も悩ませる怪物が誕生するはず。 (これはシアーズにとっては痛し痒しだな……) シアーズはこの箱庭世界に来てから、平行世界の知識を元に、HiME⇒魔力変換プロトコルや人工の魔術回路を完成させた。 これで機械やアンドロイドは媛星の力で魔術を使うことが出来る。 それに言峰の世界の魔術とシアーズのエレメント技術を組み合わせることで、擬似エレメントの量産が可能にしたのだ。 そして、この銃は、異世界のさる人妖の愛用した回転式拳銃になぞらえて、こう命名された。 カスメ トルモノ 妖鳥・HARPYIA ▼RECORD・110▼ あちこちに縄目と札の貼られた洞窟、その中央には大きな吹き溜まりが存在している。 正装の巫女が言葉ならぬ声を奏でたとき、微かに砂塵が舞い上がり、数mはあろう化物が姿を現した。 手足のない長い胴体、血の色をした鱗、黄金の月に似た悪魔の瞳。そう、説明会場で双子の娘が合身した姿に酷似していた。 これも媛星の想いの力で作られた生命体、オーファンの一種である。 HiMEたちの世界では、伝承に残る魔物の正体はオーファンやチャイルドとされている。 そして、ペガサスやドラゴンなどの有名な魔物は、他の平行世界でも認知されているケースが多い。 ならば、オーファンの容姿は他の平行世界の物の怪に似ていてもおかしくないだろう。 彼らは見てくれに相応しい戦闘力と獣の狡猾さを持ち合わせ、火を吐くなどの異能持ちもいる。 何よりも特筆すべきは高い再生力。重火器やエレメントを連続で叩き込まなければ、彼らを倒し切るのは困難だろう。 一番地は鬼道の力で彼らを大量召喚、その殺戮衝動を強引に制御し、肉の壁に利用するつもりらしい。 言峰綺礼曰く、一番地は古の鬼道を欠落させており、本来はこれほどの力を行使できないらしい。 しかも、媛星の力を霊力に流用できるのは、神崎黎人など高位の術者に限られている。 そこで、霊脈に溜まる規格外の霊力を流用することで、無理矢理これを実現させているとか。 暫くすると、二頭の雷牛が構成員と様々な呪具を引いてやってきた。今から、結界を張る用意をするのだろう。 反抗者が地下に進入してきたところを、結界で地上への退路を断つ。 それはここの全霊力を使い尽くす羽目になるだろうが、戦略上それだけの価値はある。 ▼RECORD・135▼ 巨大なコロシアム上のリング。人間大の魚型のオーファン4体が虚空を浮いていた。強さは下の上くらいか。 これに対峙するのはタンクトップとジーンズに身を包んだ黒髪の少年。 装備するのは腕輪型擬似エレメント『天輪』、これは前回のHiMEたる舞衣と同じものである。 両手をかざすことで不可視のバリアを作る防御特化型エレメントだ。 オーファンは横一列に並び、一斉射撃をしようと獲物にターゲットをあわせた。 その刹那、少女はオーファンが高圧水流を放つよりも速く、彼らの側面に回り込む。 敵陣を走り抜ける。駆け抜けざまの打撃、一瞬で地面に叩きつけられるオーファンたち。 彼らは分身で身を躱す暇もなかった。浮上しようと、仰け反った体勢を元に戻そうともがいている。 だが、彼はそれを許さない。攻撃に勝る防御はない。 ――八咫雷天流・散華 両腕に『天輪』の力を乗せ、無数の拳の弾幕で殴り倒す。再生する間もなく激しくひしゃげるオーファン、そして、水風船のように破裂。 哀れな迷える子は自身の思考の途絶えるよりも早く、光の粒となって霧散する。そして、残りの3体もあっという間に始末された。 実はこの少年は人間ではなく、新たに作られたアンドロイド『量産TKF3型』なのだ。 かつて、魔術師によって生み出され、人類を獣人達の手から救ったホムンクルスをモデルにしているとかいないとか。 少女外見の『量産MYU型』と違い、簡単な魔術回路が組み込まれている。 魔術の基礎で『強化』で擬似エレメントを一時的に硬化可能だ。 また、彼には加藤虎太郎のバトルデータをインプットしてある。これにより、有無を言わせぬ高速戦闘でオーファンを圧倒できた訳だ。 もちろん、個体によって戦闘プログラムの内容は様々である。 ただし、ベースは所詮、旧式のOS、その技量は使い手本人に比べれば付け焼刃の域。 まして、桂言葉の居合いや九鬼耀鋼の九鬼流を学習させても、直観じみた動作まではコピーできない。 おまけに、擬似エレメントによる能力底上げは、どうも人間のときより少なくなっている。 アンドロイドには、想い人を守りたいと言う気持ちが乏しいせいだろうか。そのため、強さはせいぜいランクAに留まるだろう。 だが、戦場で最強を目指す義務など何処にもない。部隊単位の戦術に組み込む分には十分に利用価値がある。 ▼RECORD・214▼ 連絡通路。エルザの足元に転がる少女型アンドロイドの残骸2体。これは神崎暗殺計画の失敗を写した動画記録。 1体目:擬似エレメント『名刀・曼珠沙華』で応戦するも、トンファーで脳天破壊される 2体目:後方からの狙撃を片手で弾かれ、腹部からビームを食らって上半身が吹き飛んだ そして、残り一体のアンドロイド、少年型も格闘技で破壊され、やむなく自爆攻撃、映像は途絶えた。 経過時間1分13秒004。その性能はシアーズの想定を余裕で越えていた。 特に火力は過去の性能テストの3割増、ランクは確実にAを超えてSに到達している。 遺伝子ベースのアンドロイドでないため、擬似エレメントは使えないのがせめてもの救いか。 これまで絶え間なく叩かれていたキーデバイスが静かになった。僅かに目を細める、アリッサ・シアーズ。 (……奴も魔導書で強化したか。正面からの戦闘は出来れば避けたいところだな) 実はミコトにも他の人工HiMEと同じく、支給品が配布されている。 これは黒幕が直接選択したものであり、神崎以外に内容を知るものはいない。 とは言え、規格外の代物なのは推測できるし、ミコト本人に渡さないとするとそれなりに危険物。 そうなると、ドーピングの正体は大体絞り込めるわけだ。 ・◆・◆・◆・ アリッサは主要なデータを閲覧し終えて、端末からログアウトする。そして、テーブルを掴んで椅子をくるりと数回転させる。 その時、通路奥のドアから言峰綺礼が姿を現した。シアーズ技術開発総括は彼を見ると落ち着かない様子を見せる。 「おっと、私は例のものの『調整』のための準備をせねば。君も言霊対策用の特殊イヤホンのインプラントの方を頑張り給え」 そして、手前の部屋にそそくさと閉じこもってしまった。彼はあれだけ言峰の引抜きを主張していた割にこの様だ。 残された職員はほっと息をつくと、資料の束を抱えて、長身の神父に目を合わせぬように小走りで去っていく。 無論、これがヒトにとっての最善手であり、彼らを責めることはできない。 「私は随分嫌われてしまったか。これでも冬木市では評判の神父だったのだがね」 言峰は切開できる格好の獲物を逃して残念そうに呟く。 彼はアリッサという存在を多少は面白いとは思っていても、切開することには興味はなかった。 彼女は機械仕掛けの天使、いや悪魔か。何かを悩むには純粋すぎて、結果を苦しむには鈍感すぎたから。 アリッサは言峰を見据えて冷淡な笑みを浮かべる。 「ミスター言峰、あれだけ好き放題やって何を言う。むつみの裏切りの引き金も汝であろうに。 シアーズはお前に利用価値があるからこそ、保護してやっていることを忘れるな」 彼女の声から会議室の時のあどけなさは消え失せていた。 言峰は幅広く魔術に通じるものの、その深さは治癒魔術以外、平凡レベルである。 だが、シアーズはこれまで魔術に全くの無知であり、それでも貴重な存在であった。言峰は傲岸不遜な口調で彼女の言葉に切り返す。 「では、私が己の利用価値を高めるのは権利であり義務だな。先ほどの会議がどうなったか教えてくれないかね」 「その精神力、シアーズの構成員にも学習させたいところだ。 まあいい、職員を『ためになる説教』でこれ以上悩ませないなら、構わないぞ」 アリッサは言峰から口約束を取り付けると、理路整然と状況を報告する。 シアーズは、もし神崎があのまま会場に戦力を展開した場合、こちらの伏兵を展開して基地を制圧するつもりであった。 だが、彼もそこを読んでいたらしく、計画を篭城戦に切り替えてきた。 無論、シアーズは乗っ取りを完全に諦めた訳ではない。一番地と反抗側を潰し合わせ、双方消耗したところで、媛星を掠め奪う計画だ。 「そうか、あの男は逆境の中から可能性を掴み、這い上がってきたか」 神父は虚ろな眼球でこの世界を他人事のように傍観していた。それでいて、僅かに口元を歪まし、血中アドレナリン値も上昇。 彼の脳内までは分からないが、何かしら快楽を感じているのは間違いない。 今回、この程度に抑えているが、士郎の死に際を視聴した時は顕著だった。 『くくく、私にとって、あの少年は衛宮切嗣以上に不可解で不快な存在だったようだ。 一人の女のために全てを投げ捨てながら、その仇敵を救って果てるとは。やはり、染み付いた本性には逆らえぬということか。 ……ああ、素晴らしい。実に素晴らしい。散り際の輝きを見るのはなんと愉しいことよ。 我が手で彼に引導を渡せなかったことが、つくづく残念でならぬ』 彼は一片の苦々しさを込めて、両足を踏み鳴らし、腹を抱えながら笑っていた。 言峰綺礼は人類の特異点である。アリッサは改めてそう思った。 彼女はAIで膨大な計算をしても、あの男の思考は理解できなかった。予測できない味方は愚かな敵よりも危険だ。 ――ゲームにおいて、全滅を企む駒の存在確率は2割程度 これもシアーズ総帥が構成員に語った訓戒だ。真実が1/5の中にあるのなら、言峰綺礼が該当者で間違いない。 いっそ、己の権限を行使して彼を殺すか。それとも、骨を二、三本折って拘禁するか。 「さて、私は真田紫子のためにミサを執りたいのだが、自室に戻っても構わないかね」 「ミスター言峰、その前に尋ねたいことがある」 緋眼の少女は立ち去ろうとする神父を引き止める。彼の防弾僧衣の内側で僅かに黒鍵の摺れる音がする。 あの短剣は死者や吸血鬼の天敵だが機械人形にはさして効果は無い。今に不意討ちをかければ、確実に彼の命を奪えるはずだ。 「なんだね? 私はお前達から相応の待遇は受けている、できる範囲でそれに応じよう」 少女は彼の不遜な瞳をしげしげと覗き込む。他の幹部は言峰綺麗の殺害を望んでいない。 計画を強行すれば、アリッサのメモリの初期化、最悪の場合は解体もありうるかもしれない。 だが、それでシアーズの不穏要素を取り除けるなら、試してみる価値はある。 「先の会議室で強化魔術を試みたのだが、予想以上に低い数値が出てしまっていな。 やはり、能力制限を食らってしまったようだ。実戦では使い物にならん。 汝の世界の法則について、より詳しく説明しては貰えぬか」 少女は表情を一切崩すことなく、神父の講釈に耳を傾けていた。彼は傲慢でありながら、そういうところは面倒見の良い男だ。 アリッサは決定を急遽変更。言峰綺麗への攻撃を保留する。時間にしてゼロコンマ45秒。 彼女は先ほど幹部を殺害したばかりだ。これ以上独断で行動すれば、言峰の暗躍以上に、内部の規律にダメージを与える可能性が高い。 ならば、このまま言峰を利用し続けよう。彼が何を企んでようとも、警戒された状況では大それたことはできまい OVER MASTER (超越) 6 <前 後> OVER MASTER (超越) 8
https://w.atwiki.jp/galgerowa2/pages/563.html
OVER MASTER (超越) 3 ◆Live4Uyua6 ・◆・◆・◆・ 食欲を掻き立てる香りと和気藹々としたざわめきが満ちている。 そこは七階の端に位置するバンケットルーム(小宴会場)で、昨日がそうであったように夕食を兼ねた報告会が行われていた。 「おやおや今晩はイタリア料理ですか。カレーライスを和食と分類するならばこれで和洋中と制覇したことになるのでしょうかねぇ。 となれば、次あたりは私にお鉢が回ってきて本格露西亜料理を? ……ありえなくもない話ですか」 独り言やや多めなトーニャの機嫌はすこぶるよい様子であった。 九条より解放されて後、浴場にて命の洗濯を終え、さて夕食だと着てみればあのきち……ドクター・ウェストの姿がないのである。 それとなしに深優に聞いてみれば、今頃は飯抜きで残業に勤しんでいるらしい。 なんでも人体間接における可動範囲の可能性に言及、実践した結果。彼は深優に泣いてやらせてくださいと懇願したのだとか。 「ふふ。どうやら、あれにいらぬ手間を掛けさせられるということはもうなさそうじゃありませんか」 ドクター・ウェストがいれば、「このさみしんぼさんのツンデレめ」などとふざけたことを言い、またキキーモラを走らせていただろう。 だが現実としていない。余計な手間もストレスもなく、平穏においしい夕食の味に集中することができる。素晴らしいことだ。 物足りない? いやいやそんなことはないだろう。ツンデレなんて失礼な話だ。もっとも、深優にお株を奪われることで出番が減るのは懸念すべきだろうが。 「確かに、ただの扱いやすい女……などと見られるのも癪ですねぇ」 ドクター・ウェストの相方なんていう見られ方は最悪だが、ではないとしたら何か少しはアピールがいるかも知れない。 そんなことをなんとなしに思い、トーニャは口の中ですっぱいトマトを噛み潰した。 「九条さんの言っていることはよくわかんないですけど、お料理の味はよーくわかります。すごくおいしいです!」 やよいがしめじを口の中でむぐむぐさせている向こうで、九条は全体に向けて本日行ったことや得られた成果を発表していた。 例えばこのホテル内にある監視装置をある程度無効化したことや、那岐が率いて東側を回っていた組が博物館で得た支給品に関してなど。 またそこから留意すべきところや、今後の方針についての再確認などなど、全体における情報の共有化を目的としたものだ。 とはいえ、言葉の通りにやよいはあまり理解していない様子で、聞いている風ではあったが意識はごはんばかりに行っている様だった。 「おいおい、まったくやよいときたらこの手のことに関しちゃあ頼りねぇ限りだな。 まぁ、そこは俺がついていて半人前同士が合わさって一人前ってことなんだが……って、何見てんだ? 美希!」 食事中ということで今は右手でなくやよいの左手にはまっているプッチャンが、やよいを見つめる美希を牽制する。 さてこいつは普通(?)の女の子と思っていたのだが、ファルや桂達に当てられたのか少し危ない領域へと足を踏み入れかけているらしい。 個人個人の趣味趣向に関して、ましてや色恋沙汰に口を出すほどプッチャンは野暮な男ではないが、しかし対象がやよいとなると話は別だ。 「あははー☆ いやですよぉ、ちょっとやよいさんが可愛いなぁって思ってただけじゃないですか。 さすがアイドルの卵さんなのです。美希めも学園ではお花ちゃん達なんて言われていましたが、いやはや」 「……うぅ? そのお花ちゃん達っていうのはさっきのぱやぱやと関係があるんですか?」 「だから、知る必要はねぇって言ってるだろう!」 さて、今まで他人事だと思っていたぱやぱや領域の侵食。 もしかしたら、これからは真剣に警戒しなくてはならないのかもしれないと、プッチャンは心中で奇妙な覚悟をするのであった。 「どうしたんだ、クリス? 食が進んでないみたいだが、口に合わないのか? これはクリスの故郷の料理だろう?」 ボールに入ったマリネを自分の取り皿に移しているところでなつきはクリスの異変に気付き、彼に声をかけた。 クリスの目の前には半分ほどまで食べられたリゾットの皿があって、もう残り半分に手をつける様子もなく彼はぼうっとした表情をしている。 何か憑き物が落ちたような、そんな見る者に不安を感じさせる顔でどこを見るのでもなくただスプーンを握って固まっている。 「……え? えっと、どうしたのなつき?」 「どうしたって、今ぼーっとしてたじゃないか。お腹が痛いのか? それとも何か変なことを考えてるんじゃないだろうな?」 クリスのなつきに対する時の表情はいつものままだ。故になつきはそこに壁があるんじゃないかと不安になる。 問い詰めても、きっとクリスは大丈夫だとしか言わないんだろうと。 それが本当なのか、弱みを見せたくないからか、それほど信用がないのか、強がっているのか、なつきは読み取れなくて、それが悲しい。 自分が馬鹿だからクリスに呆れられているんじゃないかとも、そんな風な考えも浮かび、また考えてしまう自分を愚かだと思ってしまう。 好きで、そしてこんな状況だからこそ拭えない1の不安が自身の中で10にも100にも膨らんでしまうのだ。 「あ、……あぁ。……ちょっとね、故郷……と言うのも変かな、元の世界のことを思い出していたんだ」 「元の世界?」 聞き返すなつきにクリスはうんと頷く。 ファルの作った正真正銘の生まれ育った世界の料理を食べて、その味にその世界を懐かしんでいたのだと。 ほんの三日前までは今のような状況に陥るなんて夢にも見ていなかった。 音楽の街であるピオーヴァへと移り住み、ファルテニストを目指してただ黙々と音楽学院に通う大きな変化のない日々。 すぐ傍にトルタがいるのが当たり前で、リセもいて、ファルもそこにはいて、そしてそれだけでなくて――……。 「もしかしたら、これは夢なんじゃないかなって。少しだけ思ったよ」 「クリスっ!?」 あの時の自分とあの時の自分が将来に見ていたもの。そして今の自分と今の自分がこの先に夢見ているもの。 全く違う。文字通り、世界を渡るかのようにそれは変わってしまった。 だから、思い出した以前の世界がどこか遠く、それこそ幻の様に取り戻せないものだと感じてしまった。けど―― 「なつき」 「ク、クリス……」 ――ここは確かな現実なのだと、クリスは握ったなつきの手の温かさにそれを実感する。 この手と繋がっていれば、なつきと一緒ならば、目の前の現実を見失うことはないだろうとそう確信する。 全く思い描きもしなかった異世界の、しかも幾多の可能性が存在するという曖昧な世界にいるけれども、この手を繋いでいれば大丈夫。 「ありがとうなつき」 「え? え? どういたしまして……じゃなくて! いつでも自己完結するんじゃないっ!」 「あぁ、えっと……ごめんね、なつき」 「寂しいじゃないか……」 存在を確かめたいのなら手を繋ぎ、想いを伝えたいのならば言葉を交わす、それでも気持ちが伝わりきれないならば口付けを。 「僕の世界のこともまたなつきに教えてあげるね」 「うん、じゃあ私の話も聞いてくれよ。その……夜は長いし、な」 クリスとなつき。少しすっぱいキスをして、今の気持ちを伝え合う。 「――という訳で、このホテル全体に僕が簡単な結界を張らせてもらった。 アルちゃんや深優ちゃん、他にも鋭い人がいっぱいいるからね、夜襲奇襲に関しては心配しなくてもいいというわけ。 いやぁ、こういう時はこの眠らなくてもすむ身体がありがたいやら……って、みんな僕の話聞いてる~?」 はぁ、と一通りの報告を終えて席に着いた那岐は大きな溜息をついた。 リラックスしてくれているのはいい。無駄に緊張したり深刻なよりかは断然ましだ。けど、やっぱり、ものには限度があるような気がする。 「落ち込むことはないわよ那岐君。 彼女達がああやって何の憂いもなくいられるということは、私達のバックアップがうまくいっている証じゃない」 九条の言葉を聞いて那岐は苦笑いする。 確かにその通りではある。来る主催者側との決戦に向け、事実を正確に受け止め、それを続けていたら最後まで気がもたないだろう。 なので、その時が来るまで無駄な力を使わないよう、また心身の調子を整える為に那岐もムード作りに貢献しているのだ。 「それに、みんな心の底じゃ解っている。 この中の誰かがいなくなってしまうかもしれないこと、それよりもひどい結果が待っているかもしれないこともね」 「だから今のうちにはしゃいでおこう……じゃあ、ないよね」 「ええ、みんな強い。それはみんなの生きる姿を見続けてきた私とあなたが――」 ――よく知っているさ。と、那岐はほっとした笑みを浮かべた。 勿論。彼はここにいる全員に対し強い信頼をよせている。歴代の中でも最も変てこで、最も強いHiME達だろうと。 「ただ、僕は……今回ばかりは自分もあの子たちの隣で一緒に戦いと思ってただけなんだよ」 「女の子からのけものにされて拗ねていたのね。可愛いところがあるじゃない」 「そ、それは否定しないけどね~……」 「こんなおばさんが隣にいるだけじゃあ不満かしら? あなたからすれば全然若いとは思うんだけど」 「そりゃあ、あの子達とは比べるべくも――って、嘘! 失言、じゃなくて言い間違いっ! むつみさんは超プリチー!」 鬼が――笑う鬼が其処に居た。まるで、いつぞやの阿修羅姫のように。静かに笑って、けど底知れぬ、鬼が。 「あぁ! やっぱりなつきちゃんのお母さんなんだなぁ! そういうところは――って、か、勘弁してくださいよ!」 あっちでいちゃいちゃ、こっちでぱやぱや、楽しく楽しくそしてところにより恐ろしい(?)夕食の時間はゆるやかに過ぎてゆく。 ・◆・◆・◆・ 長い長いホテルの廊下。 その廊下を一人の少年――クリス・ヴェルティン――は腕を伸ばしながら歩いていた。 その端整な顔を若干疲労に滲ませながらある場所に向かっていた。 「お風呂……余り浴槽に浸かるってのは無かったけどいいものだね」 そこはお風呂。 クリスがこの島で出会った一つの文化だった。 クリスは専らシャワーのみの生活であったからこの文化はクリスにとって斬新だったのだ。 そういえば唯湖とも温泉に入ったなと思い出しながらゆっくりと歩く。 本来はなつきと一緒に入ろうと誘ったのだが他の女性陣に凄い剣幕で睨まれたので渋々一人で入る事に。 「別にやましい気持ちなんてないんだけど……はぁ」 何か盛大な誤解を受けた気がしてクリスは思わず溜め息を付いてしまう。 元々、今日の移動による疲れもあったのだ。 体も少し悲鳴を上げているしさっさと入ろうとクリスは更衣室に入っていく。 その更衣室がやたら大きく豪華でクリスは嘆息しながらもそそくさと自分の衣服を脱いでいった。 そしてタオルを一枚持って大浴場へ。 クリスは大浴場のドアを開けた瞬間 「……わぁ」 大きく深い感動の溜め息を付いた。 それはあまりにも浴場が大きかったから。 一度に何十人も洗えそうな洗い場。 大きなサウナと気持ち良さそうなジャグジー。 そしてまるで泳いでも何ら問題ないような何十人も入れる大きな風呂が奥に鎮座していた。 クリスは何処か楽しい気分になりながらその奥の風呂に向かう。 やっぱりなつきと一緒に来ればよかったと思いながら。 きっと楽しいだろうにと少し後悔しながらも。 だが 「……あ」 「……」 その楽しげな表情が一転して戸惑いに変わる。 風呂の奥の隅に居た者。 壁にもたれながらゆっくりと入浴していたのは吾妻玲二だったのだ。 クリスは玲二と余り話した事はない。 それに加え玲二自体、暗殺者で事実ほんの前まで殺し合いを肯定していた人間だったのだ。 さらに玲二は杏を事実上殺害した本人でもある。 クリスとしては玲二に対して苦手というより戸惑いが強かった。 とはいえ、わざわざ遠く離れて入る理由もない。 クリスはゆっくり風呂に入りながらザブザブと玲二の近くまで進む。 そして玲二2メートルぐらい離れた位置で止まりそのままゆっくり肩まで浸かっていく。 隣に玲二は居るが彼は気にせずクリスに対して振り向く事はなかった。 「………………」 「………………」 そしてお互い静かに入浴したまま五分程度の時間が流れていく。 互いに喋る事も無くゆっくりと。 クリスは玲二に対して何か話そうとするも言葉が詰まってしまう。 余り話した事もないから何を話せばいいのか迷ってしまう。 元々クリスは話すのは苦手な方だ。 それに加え玲二は何処か人を遠ざけているイメージがあって尚更どう話せばいいのか分からない。 元々殺し合いに乗っていた人間である事も影響していた。 安易に踏み込む事はできず、そして踏み込んだとしても何処まで踏み込んでいいかも分からなかった。 それ故にクリスは喋ろうと喋りかかるもそのまま黙るという行為を何度も繰り返し戸惑ってしまった。 しかし、それでも何か言葉をかけなければならない。 クリスはそう覚悟を決め口をあけようとする。 その時だった。 「……おい」 「……え?」 玲二がクリスに向けて言葉を発したのは。 クリスは不意を取られる形になり戸惑ってしまう。 そんなクリスを玲二は無視して言葉を続ける。 それは 「クリス・ヴェルティン……お前は護るものが多いな」 クリスに対する不快感と嫌悪感が混じった皮肉の言葉。 何処か苛立ちが感じられるような。 そんな声だった。 驚くクリスを尻目に玲二は喋り続ける。 「恋人である玖我なつきの他にも来ヶ谷唯湖……そして場合によってはファルシータ・フォーセット、九条むつみも護るつもりなんだろう?」 上げた名前はクリスにとって縁が深い者達。 クリスの最愛のものであるなつき。 クリスが救ってあげなければならない唯湖。 そしてクリスの友人であるファルとなつきの母親であるむつみ。 クリスは彼女達を出来れば護りたいと思っていた。 そんなクリスに対して玲二が冷たく言う。 「それだけ多くて……護れるのか? お前は? 取りこぼしたりはしないのか?」 「それは……」 クリスに出来るのかと聞く。 その人数は玲二にすると多くて考えられなかった。 そしてクリスは即答できなかった。 風呂から静かに湯気立ち上る中、答えられなかったクリスに対して何の感情も見せず玲二は言葉を続ける。 「それに……お前に力はあるのか。護る力が。それだけの人達を……俺には有る様には思えないが」 「……」 クリスに力はあるかと。 元々クリスはただの学生でしかない。 少し魔術系の道具を使えるだけで後はただの少年でしかないのだ。 そんなクリスに沢山の人を護れるのかと。 「……力も無ければ……何も出来なければ……迷えば……護れず失うだけだ」 返答できないクリスに冷たく結論を言う。 力も無ければ護れないと。 玲二が失うという言葉を発した時何処か哀しい表情をしたのをクリスは気付かない。 クリスは言葉を失いただ黙るだけ。 何もかも正論だった。 だからこそ答えられなかったのだ。 今のクリスではその正論には勝てることは出来ない。 力が無いのは事実であったから。 そのあまりに正しい意見に言葉を失うだけだった。 それでもクリスは考える。 何か出来ないかと。 そんなクリスを尻目に 「……俺は一人で手一杯だ……しかも……それでも護れなかった……」 玲二はひとりそう呟いて。 そのまま立ち上がる。 その体には無数の傷。 キャルを護ろうとして負った傷だった。 クリスをその場において風呂から上がろうとする。 しかし、何か思い出したように止まり 「クリス」 振り返らずクリスに対して告げる。 「来ヶ谷唯湖は何が有ったかは知らないが……今、主催側に居る……つまり、俺にとっては敵だ……キャルの仇であり敵だ」 慈悲も無く残酷に。 クリスにとっては聞きたくない言葉を。 静かに躊躇いも無く玲二を言った。 「だから―――来ヶ谷唯湖に会ったら、俺は躊躇い無く殺す……何の感情も無く、慈悲も無く、迷いも無く……ただ殺す」 殺すと。 ただ、殺す。 それは敵であるから。 そんなシンプルな理由。 玲二にあっては絶対の理由だった。 そんな玲二に驚き少し顔を怒りに歪め玲二に何か言おうとする。 だがその直後 「だから―――俺より早く着け。そして護って見せろ」 声を変えることも無く。 だがどこか優しく感じられるように。 そう、クリスにいったのだ。 会ったら殺すしかない。 だから、その前に唯湖に会って見せろと。 「悔やむ前に―――俺より早く辿り着いて見せろ」 そう、クリスにエールを送るように。 大切なものを持った人間に。 激励の言葉を玲二なりに贈って見せたのだ。 「……俺は間に合わなかった」 そう哀しく寂しく呟いて。 間に合わなかった者が、護れなかった者が。 まだ可能性がある者に間に合って欲しいと応援するように。 そう、静かに告げた。 「……少し喋りすぎた」 玲二はそう呟き風呂から出て行った。 残されたのはクリス一人のみ。 クリスはお湯を掬ってみる。 透明なお湯。 そこに映るのはクリスの顔。 その顔は玲二の問いに対する答えを真剣に考えて。 玲二の応援の意味をしっかりと受け取って。 前に進もうとする顔だった。 ・◆・◆・◆・ 「汝も衣替えか? そういうものも存外に似合っておるの?」 浴場を後にし、PCの設置された作戦室へと出向いた玲二にかけられた第一声がそれであった。 アルが言葉に発したとおり、玲二の身を包む衣装は度重なる戦闘によって襤褸となったスーツから別のものへと変わっていた。 今現在。彼が着ているのはダーク系のスーツとは真逆の、黄色や赤と原色が派手に散りばめられたアロハシャツである。 「お前の相棒から押し付けられたものだ」 あくまで自分の趣味ではないと言外に滲ませ、玲二は一つの椅子に座り机の上に広げられていた資料を手に取る。 彼の言葉を聞いたアルの方はというと、ぷにゅぷにゅとしたダンセイニの上で小さな頬を膨らませていた。 相棒――つまりは彼女のマスターたる九郎から押し付けられたとは一体どういうことなのか? 服を譲ることに関しては問題はない。見るに見かねて新しい衣装を玲二に譲ったというのなら、お人好しなだけで悪いことではない。 問題はとすると、その新しい衣装の出所だ。以前確かめた時にはこんな派手なものを九郎は持っていなかった。つまり―― 「あのうつけめ。桂といい、柚明といい、ただ一度の機会をなんと捉えているのか」 ――例の博物館で手に入れたのだろう。 もっとも、あそこに飾られている物は珍妙で傍目にすぐ有用と解る物ばかりではなかった。 故に、ならばとりあえず解り易い物を手に取るというのも一つの方法ではある。がしかし、明らかに有用でない物を取ることもないだろう。 「まぁ、よいわ」 小さく溜息をつき、アルは視線を手にした紙へと戻す。 彼女が今見ているのは九条が主催者側より持ち出した極秘資料の一部。 部屋を見渡せば、アルと玲二の他にも、トーニャ、深優、那岐とが同じ様に机を囲んで資料に目を通しており、 奥の方では持ち出した張本人である九条がPCを操作し、優先度の高いものを選んでプリントアウトする作業を行っていた。 「とりあえず概要を掴む為のものに関しては以上よ。 その他の資料に関しては直接このPCで閲覧してちょうだい。ファイリングしておいたから目当てのものを探すのに手間はいらないはずだわ」 九条の言葉を聞き、室内の面々はそれぞれの仕草や短い言葉でそれに応答した。 監視の目に関してはもう心配いらなくなったのでこうしておおっぴらな作戦会議を行えるようになったが、壁の耳に関してはまだだ。 故に、迂闊な言葉を漏らさぬよう全員が口を開くことに慎重になっている。 「じゃあ、私はウェスト博士の様子を見に行ってくるわね」 言って、九条は扉を潜り部屋を後にした。 主催者の聞き耳を閉じる装置はドクター・ウェストにその作成を依頼しており、その成果を確認しに行く為である。 「ふむ、では妾も一度席を外そうかの。黙したまま引き篭もっておっては息が詰まるわ」 ダンセイニの上から小さな体躯を弾ませ、アルは読んでいた資料を机の上に戻すとダンセイニを後ろにつけて部屋を出て行く。 それから四半時が経ち、同じような理由でトーニャが部屋を後にし、那岐も結界の様子を見てくると告げて部屋を去った。 静寂が満ちた部屋に残されたのは、互いに元より口数の少ない深優と玲二の2人。 2人とも無言のまま、ただそうするだけといった風に机の上に広げられた資料をひとつひとつ丁寧に精査している。 苦痛や退屈な様子も感じさせず、かといって怒りや喜びがあるわけでもなく、ただ黙々と目的を成すためだけの機械のように。 「深優。少しつきあってくれ」 更に半時ほどが経ち、資料を一通り見終えた玲二が椅子から腰を上げて深優に呼びかけた。 夜の帳も落ちきった頃。男女が2人でとなれば何か想像できる台詞だったかも知れないが、しかし2人に間に色香はない。 机を半周して玲二はPCの前へと改めて腰を下ろす。それが何を意味するのか、理解し深優もその隣へと移動した。 ”……――あーあー、マイクのテスト中。マイクのテスト中である” と、丁度その時、室内に、いやホテル内全体にあの狂科学者の声が鳴り響いてきた。 無駄な部分を省き要点だけを摘まんで言うと、どうやら件のジャマーが完成し正常に作動を始めたとのこと。 一言で済む内容ではあるが、彼がそれを一言で済まさないのは周知の事実だ。 話は脱線と暴走を繰り返し、果て無き妄想の世界へ――と行きそうな所で唐突に途絶えた。 恐らくは、そこに同席しているであろう九条がマイクのスイッチを切ったか、またはトーニャが熾烈なツッコミを入れたかだろう。 ともかくとして、これ以降は無理に口を閉じる必要もなくなったのだ。都合がいいと、玲二は早速深優に言葉をかけた。 「標的側の戦力評価をしたい。知っている範囲で構わないから協力してくれ」 了解しました。とだけ深優は言葉を発する。 無駄口を吐けるようになったからといって互いにそうする性分ではないのだ。変わらず、ただ最低限の範囲のみで口を利くだけである。 「島の地下に蜘蛛の巣状に……いや、例えるならば蟻の巣かこれは」 「ええ。要所要所に部屋と呼べるような空間があり、その間を細い道が連絡しているという点ではその例えが的確でしょう。 戦力を展開できる空間が限られているだけに、その点だけを見れば少数精鋭となるこちら側が有利とも判定できます」 2人がまず開いたのは、おそらくは決戦の舞台となるであろう主催本拠地の立体見取り図であった。 それは殺し合いが行われていた島の地下に広く張り巡らされており、例えた通りに一見すれば蟻の巣のように見える。 「だが、戦場や移動ルートが限られるということはそれだけ相手も対処しやすいということだ」 言いながら玲二はキーボードを叩いて画面にいくつかの情報を浮かび上がらせた。 それは通路の間にある隔壁の仕組みや、防災用の対処機構。また侵入者に対する警戒装置などの情報であった。 「どうやら直接的な対人攻撃システムなどはないようですね。 防災や警戒のシステムに関してもこの規模の建物なら平均的と言える程度のものです」 「この情報が正しければというのが前提だがな。 それにただの隔壁だけでも戦力の分断やルートの誘導には使える。首輪で位置が知れる以上、これは明らかに不利な点だ」 位置が知られてしまっては、少数精鋭でのゲリラ戦はその根底からして成り立たない。 主催本拠地に対侵入者用の催涙装置や火器などが存在しないのは僥倖であったが、それも人を配すればいいだけのことであって 決して手放しで喜べるものでもなかった。やはり、数に劣る参加者側が根本的に不利であるのは変わらないだろう。 「深優。この量産型アンドロイドの戦力はお前を基準とした場合、どの程度のものになる?」 次に玲二が当たったのは、直接対決することになるであろう主催者側の戦闘員に関するデータであった。 そしてその中で特に気になったのが、彼の隣にいる深優をベースにシアーズ財団が量産化した戦闘アンドロイドの存在である。 一般職員や警備兵などは数こそいるものの、アルの魔法やHiMEが呼び出すチャイルドの前ではさして問題にならないだろう。 だが、30体強ほどとこちらの数よりも多く配備されている戦闘アンドロイドがその大元である深優に匹敵するとしたらそれは大きな問題だ。 「現在、私のメモリ内に残っている情報がこの資料に記されているものよりもバージョンが前のものなので正確には答えられませんが、 エレメントやチャイルドと言ったHiME固有の能力を無視した場合、量産型の能力は私の6割から8割程度となります」 深優の評価に玲二は口を強く結んだ。 決してそれは楽観できる情報ではない。 例え個体単位で深優よりかは劣るといっても、逆にこちら側も全員が深優のように強力なわけではないのだ。 更に数でも劣るとなれば、まともにぶつかった場合――全滅は必至のことだろう。 加えて、主催者側には神崎黎人をはじめとする一番地の人間が操るオーファンといった存在もある。 これも深優から聞けば、HiMEの操るチャイルドからは格段に劣るものの、特殊な性質から一般的な銃や火器は効果が乏しい相手らしい。 「玖我なつきであればオーファンを倒すことは容易いでしょうが、玲二では倒しきることは難しいでしょう。 逆に戦闘アンドロイドに相対した場合。玲二であれば撃退が可能でしょうが、玖我なつきには難しいかもしれません」 深優の解説を受けながら玲二は一通りのデータをチェックし、そしてそれらを閉じると微かな溜息を漏らした。 「……どうやら、俺一人でどうこうできる相手ではないらしい」 席を立ち、玲二はそう零した。 独断先行も可能性としては考えていたが、しかしそれは心の内に仕舞っておけばよかっただろう。 なのに、まるで聞かせるかのように呟いてしまっていた。どうしてなのか? その答えは本人にとっても不明瞭だ。 「神崎黎人の暗殺ですか」 「ああ。俺はいつだって独りでそうしてきた。それがファントムであり、そして俺は結局亡霊でしかない」 玲二は深優の方は見ようとせず、ただ暗い瞳で虚空を見つめている。 その在り様は、与えられた名前の通りに音も無く命の灯火を吹き消して行く亡霊に相応しい。 そしてそんな亡霊に対し、科学と歯車によって生み出された人ならざる少女はなんら臆することなく言葉を投げかけた。 「暗殺に関しては決して悪くない提案だと言えます。敵との総力戦が無謀である以上。司令官を狙い打つは必定。ですが――」 「――そう。単独では無理だ。神崎を包む守りは堅く分厚い。お前や、あいつらの協力は必須だ。つまり、逆に言えば」 俺がお前達に協力し連携を取る必要がある。と、玲二は深優の方へと振り返った。 見合わせる2人。亡霊の男と機械の少女の顔に表情はない。しかし、それは彼らに心や感情がないことを意味するのか? 「よろしくたのむ」 そんなことはない。如何なる成り立ちであろうとも彼と彼女は人間に他ならない。 「こちらも協力体制の継続を歓迎します」 ただ少しだけ、少しだけ不器用な生き方をしている。ただ、それだけの話なのである。 ・◆・◆・◆・ 719号室とプレートのついた扉を一応はという程度にノックしてトーニャはその中へと入り込んだ。 「お。トーニャちゃんおっかえりー」 迎えるのは同室を使う碧の明るい声と、レトロ調で揃えられたツインルーム。 薄い色のシーツが敷かれたベッドが二つ。その間には小さなテーブルがあり、奥の壁は一面が硝子で星月夜が壁紙の代わりをしている。 最低限の用心をということでどの部屋も二人以上で寝泊りすることになっており、この719号室ではトーニャと碧がそうであるということだった。 「あ! ちょっと、何を勝手に人のものに手をつけているんですかっ!」 扉を後ろ手に閉め、一歩二歩と進んだところでトーニャの目が見開き声があがる。 見やればベッドに腰掛けている碧の手にはあの”蜂蜜酒”。トーニャは隠しておいたのだが、全く油断も隙もないといったところだろう。 「んっんー、これは先生が没収しちゃうな~♪ だって、トーニャちゃんまだ未成年じゃない。だとしたら、学校の先生としては風紀上これを看過することはできにゃいのだよ。うん」 「今更何をっ! ここではそのような世俗の決まりなど関係ないでしょうに。 じゃああれですか? 碧さんは立派な大人だと? ええ、ええ、認めましょうとも……――”自称17歳”を撤回するのならばね!」 トーニャの熾烈な反撃に碧はうぐぅと唸る。 年齢制限などというラインを出したことが裏目となった形で、押しても引いても負けとなれば最早これは王手に他ならない。 「いやーん。トーニャちゃんこわーい♪ み・ど・り・泣いちゃう☆」 「ええい、気色悪い! どーでもいいからそれを返しなさい。それは私の所有物です!」 などとやり取りするものの、実は互いにこれを独占するつもりなど毛頭ない。 そのつもりなら碧もトーニャの帰りをわざわざ待ちはしなかっただろう。所謂、スキンシップというやつである。 もっとも、トーニャの側からすれば宛がわれた人物がまたしても要ツッコミ人物となれば、やや辟易するかも知れなかったが。 「”酒は百薬の長”とは中国の古典からの言葉だけどね、この蜂蜜酒ってのは実際にそうだったこと知ってる?」 「いえ、寡聞にて存じ上げませんが、ご教授いただけるのですか? 先生殿」 結局一緒に呑むこととなった二人はテーブルを挟みベッドに腰掛けて相対している。 備えつきのサイドボードからグラスと、そして冷蔵庫から氷を取り出すと、酒瓶の栓を開け酒宴の準備を整えた。 「この蜂蜜酒はミードって言うんだけど、ここに生薬や香料を加えたもののことはメグセリンって呼んだの。 でもってそのメグセリンって名前が英語の薬――メディスンの語源じゃないかなーって言われているわけ」 「なるほど。意外と物知りなんですねぇ」 「おいおいー、これでも私は学校の先生だよー? 専門は日本史だけどさ。古典や古代文明なら割と手広く好きだったりするわけよー。ロマンティックだし!」 「私は昔のことよりもこれから先のことに興味を持ちたいですけれどもねぇ」 言い交わして二人はグラスを手に取り、軽く乾杯して透明な液体を口の中に流し込んだ。 味は蜂蜜酒という名前のイメージからすると意外とさっぱりとした感じで、ほの甘くて口当たりもよく中々に飲みやすい。 溜まった疲れを溶かすのにもちょうどいい。そう二人が思った時――異変は起こった。 「な、な……何事ですか? これは……!?」 「うっそ? たった一口で悪酔い!?」 二人の目の前に見える世界が一変していた。 腰を下ろしているベッドも、その下の床も、さらにその先まで、何もかもが透けてゆらゆらとまるで蜃気楼のように見えていた。 そう見えるだけで、感触からそのままそれらがあるというのは判るが、しかしまるで宙にぶら下げられたような感覚で身動きが取れない。 全てが曖昧な世界の中、確かにはっきりと見えるのは酒を飲んだお互いの姿だけ――ではなく。 「碧っ! 後ろっ! それっ!?」 「え、え? ……って、ええぇぇぇえええっ!? これって、どういうこと!?」 トーニャが指差す背後。碧が振り返ると、そこには半透明の壁にめり込むような形で彼女のチャイルドである愕天王が鎮座していた。 しかし彼女はチャイルドを召喚してはいない。ましてや暴走というわけでもない。怪獣の主である碧には解る。つまりこれは―― 「呼び出す前の姿。ずっと私の傍にいてくれてる……」 ――そういうことであった。 よくよく観察してみれば、顕現させた時に比べると愕天王の姿にも少しの違いが見られた。おそらくは待機状態の姿なのであろう。 「……これは一体。ただの酒ではなかった。ええ、それはいいでしょう。ならば、つまり私達に見えているのは?」 現世ではない力の有様か。と、トーニャは碧のチャイルドと、己の背中から伸びたキキーモラを見て推測する。 酒を飲んだ者以外だと、人妖や怪異。それに類する見えないものがよく見れて、逆に普段見えるものは透けて見えるらしい。 キキーモラに流れる力も今はオーラという形で見ることができた。そして―― 「あれが、媛星……なんですか」 天より愕天王に流れ込む力。それを辿って首を持ち上げてみれば、そこには月の隣に並ぶ真紅の妖星の姿があった。 媛星からは水が零れるかのように幾筋も光と見える力が地へと流れ落ちていた。 その一つは碧の愕天王で、おそらくはその光の下にはそれぞれ一人のHiMEと一体のチャイルドが存在するのであろう。 「媛星の実在をこの目で確かめられたことはよいでしょう。ええ、納得できました。が――」 「――こ、これ。どうやったら元に戻るの?」 那岐や九条らの口先からでしかその存在を聞かされていなかった媛星。 落ちてくれば人類絶滅などと言われても、見えないものを信じるのは難しかった。騙されているかもしれないという懸念は零にはならない。 その問題が偶然にしろ解決したのはよいだろう。だが、この状態はどうすれば解除されるのか? うろたえる二人の耳に新しいノックの音が届く。 「碧よ。ここに九郎が寄っておらぬか?」 透けた扉の向こう側にいたのは、”はっきり”とその姿が彼女達の目に映る、魔導書の化身アル・アジフであった。 「ふむ。ようやっと思い出したわ。これはただの蜂蜜酒でなく”黄金の蜂蜜酒”というものじゃの」 アルは酒瓶の口の近くで鼻を鳴らし、困惑する二人にこの酒の正体を解説した。 一見すればただの酒でしかなく、アル自身も今まで気づいていなかったがこの黄金の蜂蜜酒は魔術ドラッグの一種なのだ。 その効果はトーニャと碧が体験した通り、目に見える世界の位相をずらし現世には映らぬものを見られるようにするというものである。 また飲んだ者自体の位相をもずらすために、現世における物理的な干渉を大幅に減じるという効果も得られる。 「用途としては、トランス状態になることでより”直接”的な魔術を行使してみたり、 素養のないものがこれを使って見えざるものと交信を試みたり――などといったところじゃな。薬は薬でもこれは麻薬じゃ」 麻薬と聞いて二人の顔が青褪める。 この奇怪な現象は収まらないのか。また収まったとしても禁断症状や後遺症が出るのではないか。などと不安の種は尽きない。 「とりあえずこの酒は没収するとして……安心せい。別段、後遺症などはありはせん。 トランス状態も酒が抜ければ同時に元に戻る。 浴場にでも行って湯でも浴びてくるとよいであろう。そのままでは中々醒めぬ酒ゆえにな、何もしなければ朝まではそのままじゃ」 では、もう用はないとアルは酒瓶を手に踵を返した。 後に残されたトーニャと碧はと言うと、互いに見合わせるとおっかなびっくりと透ける床の上を進み、見えない戸で指を突いたりしながら これも透けている浴衣などを取り、いそいそと湯浴みの支度を進めるのであった――……。 「やれやれ、あやつときたらどこをほっぽり歩いているのやら……」 719号室の隣。割り当てられた部屋である718号室に戻ってきたアルは酒瓶をベッドに投げ、やれやれと溜息をついた。 ここも隣と変わらぬツインルームではあるが、アルの相方である九郎の姿はない。そこにいるのはダンセイニだけだ。 「……魔導書を放ったままのマスターがどこにいるか」 「てけり・り」 悪趣味な殺し合いの島。 そこに放り込まれて2日ほど。色々あり、ようやく再会できたというのに、その後ときたらろくに接する機会がなかった。 今日にしても、半日の我慢と思えばむしろその後が楽しみなぐらいであったのに、しかし九郎は部屋には戻って……こない。 「何を考えておる。あやつも……妾も……」 「てけり・り」 「うむ。待つ女などとは妾の性分ではない。あの放蕩マスターをまた探しにゆくとするか。 今度こそは首根っこ捕まえて、自分が誰にとっての何かをとくと教育してやることにしようぞ。ついて参れ」 「てけり・り」 この階にいなければ下かとあたりをつけ、アルは部屋から出るとダンセイニを引きつれエレベーターホールへと向かった。 OVER MASTER (超越) 2 <前 後> OVER MASTER (超越) 4
https://w.atwiki.jp/starsiege_deadzone/pages/30.html
概要 装備品に付与される 特定のMasteryを2,4まで上げるとバフを得られる他、特定の箱や扉を開くのに必要な場合がある。 6まで上げると特定のAbilityのバフを得る Medic Lv 付与能力 2 ヘルスパックの使用時間を短縮 4 シールドパックの使用時間を短縮 6 蘇生時に自分のヘルスとシールドが全回復する Recon Lv 付与能力 2 Cybridsの場所がミニマップに表示される 4 フラッシュライトの距離が伸び、照らしている場所に隠れている敵を発見出来るようになる。 6 Stealth終了時に4秒間20%のダメージボーナスを得る Hacker Lv 付与能力 2 ドアの開放時間を短縮 4 ターミナルハッキング時に追加ポイントを獲得 6 スキャンフィールドが相手に見えなくなる Agility Lv 付与能力 2 ダメージを受けると2秒間移動速度が30%増加(クールタイム15秒) 4 ダッシュ速度が15%増加 6 Relocateが+1チャージされる Trapper Lv 付与能力 2 罠にかかった敵が判るようになる 4 マイントラップに引っかからなくなる 6 Proximity Mineに4秒間のスロー効果を追加 Acoustics Lv 付与能力 2 グレネードでダメージを与えた敵を5秒間表示する 4 発砲した敵をミニマップに表示する 6 Motion Sensorの有効範囲内にいると正体を暴かれたり位置を特定されたりすることがなくなる。 Engineering Lv 付与能力 2 ルートボックスを開ける時間を短縮 4 スペシャルルートボックス(金箱)が開封可能になる 6 Turretを1つ追加する Heavy Armor Lv 付与能力 2 最大ヘルスが20増加 4 最大シールドが20増加 6 Dome Shieldを通過した敵にダメージを与える +30から20へ弱体化 Cybrid Killer Lv 付与能力 2 Cybridへのダメージが30%増加 4 Cybridからのダメージが30%減少 6 Decoyが別のプレイヤーを攻撃するようになる Evasion Lv 付与能力 2 シールドが無い場合、アビリティーによる発見を防ぐ 4 しゃがんでいる間はCybridから先に攻撃されなくなる 6 Phase shiftが終了時再使用か早めに終了できるようになる
https://w.atwiki.jp/stones/pages/193.html
■Nasty Music (20 Bit-01) (1CD) The King Biscuit Flower Hour ■Lacerated (20 Bit-02) (1CD) The King Biscuit Flower Hour ■So Much Younger Than Today (20 Bit-03) (1CD) 1966.7.28 BACK / NEXT
https://w.atwiki.jp/kirby_return/pages/105.html
Section 6 Data master1/Step01.dat x4 0x41FCE148 31.61 x8 0x42E8A8F6 116.33 xC 0xC36D51EC -237.32 x10 0x3FA8F5C3 1.32 x14 0x41270A3D 10.44 x18 0x41675C29 14.46 x1C 0x4236CCCD 45.7 x20 0x3DCCCCCD 0.1 x24 0x00000000 0.0 x28 0x00000000 0.0 x2C 0x00000000 0.0 x30 0x3E4CCCCD 0.2 x34 0x00000000 0.0 x38 0x00000000 0 x3C 0x00000000 0 x40 0x00000000 0 x44 0x00000000 0 x48 0x00000000 0 master2/Step01.dat x4 0xC2960000 -75.0 x8 0xC0266666 -2.6 xC 0x43180000 152.0 x10 0x3FDC28F6 1.72 x14 0xC1200000 -10.0 x18 0x00000000 0.0 x1C 0x41840000 16.5 x20 0x3DCCCCCD 0.1 x24 0x00000000 0.0 x28 0x00000000 0.0 x2C 0x00000000 0.0 x30 0x3E99999A 0.3 x34 0x00000000 0.0 x38 0x00000000 0 x3C 0x00000000 0 x40 0x00000000 0 x44 0x00000000 0 x48 0x00000000 0 master3/Step01.dat と master4/Step01.dat x4 0x433663D7 182.39 x8 0x426AA3D7 58.66 xC 0x41C00000 24.0 x10 0xC1273333 -10.45 x14 0x3C23D70A 0.01 x18 0x00000000 0.0 x1C 0x41B33333 22.4 x20 0x3F000000 0.5 x24 0x00000000 0.0 x28 0x00000000 0.0 x2C 0x00000000 0.0 x30 0x3F000000 0.5 x34 0x00000000 0.0 x38 0x00000000 0 x3C 0x00000000 0 x40 0x00000000 0 x44 0x00000000 0 x48 0x00000000 0
https://w.atwiki.jp/neondaoc/pages/28.html
マスターレベル マスターレベルとは、全100個の偉大なる試練(要するにクエスト100個)に挑戦し成し遂げた者に与えられる特別なスキルです。 勝敗を左右する重要かつUber(めちゃすごい)なスキルもあれば、使いどころの怪しいスキルもあり、うまく使いこなすことが プレイヤースキルの見せどころになっています。 Battlemaster 主に殴り職(TANKやアタッカー)が習得出来るスキルです。TANKは悩んだらコレ。 Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Sapping Strike 敵プレイヤーやペットとその周囲の敵のスタミナを25減らす 範囲350 最大16人まで巻き込む 武器スタイル(条件なし) End(スタミナ)消費がヤバいです 2 Faultfinder 敵プレイヤーやペットに対する攻撃に20.0DPSのEssence属性ダメージを20秒間付与する 無詠唱魔法(Instant)再詠唱2分 デメリットが無い、とりあえず使いましょう 3 Power Leak 敵プレイヤーやペットとその周囲の敵のpower(MP)を110減らす 範囲350 最大16人まで巻き込む 武器スタイル(条件なし) End(スタミナ)消費がヤバいですが、キャスターはこれ食らうと泣けます 4 Grapple 敵プレイヤーやペットを10秒間動けなくする、但し自分は12秒間動けなくなる。食らった敵は殴られなくなる。 射程150 無詠唱魔法(Instant) 再詠唱1分 使用にプレイヤースキルを要求されます 5 Essence Flames 範囲350以内の味方(自分含む)の武器に、10%の確率で発動するEssence属性のダメージ魔法を付与します 武器スタイル(条件なし)効果時間15秒 壁や扉を殴る時にどうぞ 6 Throw Weapon 敵プレイヤーやペットに手に持った武器を投げつけます 射程700 再使用は10秒 投げた後は10秒間武器攻撃が出来ない 職業によっては、これしか飛び道具が無い場合も 7 Essence Sear 周囲(の敵)に15%のEssence属性を下げるデバフを与えます 範囲350 武器スタイル(Essence Flamesからの2段目) 便利だが使う余裕が中々見当たらない 8 Body Guard グループメンバーを武器による攻撃から完全に保護します。保護される味方が動くと効果はありません。有効範囲150 無詠唱魔法(Instant)再詠唱0秒 立ち回りが要求される、神スキル 9 Essence Dampen 敵プレイヤーやペットのDEX(器用さ)を15%下げます 範囲350 武器スタイル(条件なし)効果時間15秒 微妙過ぎますが、2段目を使う為に必須 10 Essence Shatter 敵プレイヤーやペットとその周囲の敵が持つ有利な効果のある強化魔法(Buff)をランダムで1個解呪(ディスペル)します。 範囲350 武器スタイル(Essence Dampenからの2段目) リアルラックを要求される、運が良ければ凄いことになる Banelord ダメージディーラ(DPS職)が習得出来るスキルです。取れるならこれを取りましょう。 Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Zone of Unmana 周囲の敵プレイヤーの詠唱速度を20秒間50%低下させる。 リキャスト5分 2 Primal Agony 周囲の敵プレイヤーのHp/Pow/Endを10%減少させる。 リキャスト5分 3 Oppression リキャスト5分 4 Inexorable Defeat 周囲の敵プレイヤーの消費Endを20秒間50%増加させる。 リキャスト5分 5 Tactical Insight 周囲の味方プレイヤーに攻撃が命中する確率を30秒間15%低下させる。 リキャスト5分 6 Snaring Tendrils of Power 周囲の敵プレイヤーに50%スネアを付与し、自分はスタンする。効果時間10秒 リキャスト5分 7 Chaotic Power 周囲の味方プレイヤーの攻撃が命中する確率を30秒間10%増加させる。 リキャスト5分 8 Agony Transmission 周囲の敵プレイヤーのHp/Pow/Endを20%減少させる。自身のHpを大きく消費する。 リキャスト10分 9 Demoralization 周囲の敵プレイヤーのスペックを30秒間50%減少させる。 リキャスト5分 10 Banespike 周囲の味方プレイヤーの攻撃ダメージを10秒間増加させる。 リキャスト5分 エッセンス属性 Perfecter Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Purging Wave 範囲内のグループメンバーのDisease状態を解除する。 キャスト4.0秒 射程2,000 2 Purify Senses 対象(味方)のNearsightとSilence状態を解除する。 キャスト3.0秒 射程1,500 3 Sphere of Rejuvenation* 範囲内の味方プレイヤーのHpを100/5sec回復するWardを設置する。 リキャスト5分 キャスト20.0秒 範囲350 4 Greatness Concentration上限が20%増加する。 パッシブ 5 Font of Power* 範囲内の味方プレイヤーのPwを5%/5sec追加回復するWardを設置する。 リキャスト5分 キャスト20.0秒 範囲350 6 Determination Field* 範囲内の味方プレイヤーの受けるMezmerizeの効果時間を25%減少させるWardを設置する。 リキャスト5分 キャスト20.0秒 範囲350 7 Leaping Health 30秒以内に使用する1回のシングルヒールを範囲化する。 リキャスト5分 8 Restore the Soul 対象(味方)のRez sickを解除する。 9 Dissonating Ward* 範囲内の敵プレイヤーのPowを減少させるWardを設置する。 リキャスト5分 キャスト20.0秒 範囲350 10 Rampant Healing 30秒以内に使用する1回のグループヒールを範囲化する。 リキャスト5分 *リキャスト時間共有 Convoker Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Summon Wood 2 Prescience Node 範囲内のステルス状態を視認できるようになるWardを設置する。Speedwarpとリキャスト共有。 リキャスト5分 キャスト2.0 範囲1,000 3 Power Trap 4 Speedwarp 範囲内の敵プレイヤーのスピードバフを無効にするWardを設置する。PrescienceNodeとリキャスト共有。 リキャスト5分 キャスト2.0秒 範囲2,000 5 Summon Warcrystal 6 Battlewarder 7 Dissonance Trap 8 Brittle Guard 20分間BrittleGuardを召喚する。BrittleGuardは1回だけmelee攻撃を防ぎ死亡する。 リキャスト5分 9 Summon Mastery 20秒間ペットのレベルを増加させる。 リキャスト10分 10 Crystal Titan Stormlord Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Dazzling Array 2 Vacuum Vortex 3 Enervating Gas 4 Inebriating Fumes 5 Mental Siphon 6 Focusing Winds 7 Choking Vapors 8 Sense Dulling Cloud 9 Energy Tempest 10 Arcing Power Sojourner Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Unburdened Warrior 2 Unending Breath 3 Reveal Crystalseed 4 Unmake Crystalseed 5 Ancient Transmuter 6 Gateway 7 Resistance of the Ancients 8 Forceful Zephyr 対象(敵プレイヤー)を10秒間掴みランダムな方向へ強制移動させる。掴まれている間はダメージを受けない。 1分間の免疫あり 9 Phase Shift 10秒間魔法や近接攻撃に対してほとんど無敵状態になる。 10 Mass Gateway Spymaster Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Pickpocket 2 Decoy 3 Enduring Poison 4 Sabotage 5 Tanhlesnare 6 Poisonspike 7 Lookout 8 Siege Wrecker 9 Essence Flame 10 Blanket of Camouflage Warlord Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Siege Master 2 Bolstering Battlecry 3 Cowering Bellow 4 Resillient Will 5 Guided Strike 6 Energizing Aura 7 Cleansing Aura 8 Defending Martyr 9 Leadership 10 Warguard
https://w.atwiki.jp/asigami/pages/360.html
曲名 アーティスト フォルダ 難易度 BPM NOTES/FREEZE(SHOCK) Quickening dj TAKA SuperNOVA 激11 150 333/13 STREAM VOLTAGE AIR FREEZE CHAOS 67 93 7 40 36 譜面 http //eba502.web.fc2.com/fumen/ddr/festival/quicken_4m_fes.html 動画 http //www.youtube.com/watch?v=JhuO8YnG66s (x2.0,NOTE) 解説 最初の方にある長い地団駄が特徴的。形は踏みやすいのでリズムだけ気をつけよう。 前半は音合わせ譜面、後半は8分踏み譜面になっている。ラストの滝は65連と長くビジステップも絡むので要注意。 名前 コメント コメント(感想など) フォルダEXTREMEになってたので直しました -- 名無しさん (2012-02-15 21 21 02) 地団駄でVOL上げられるし8分滝もBPM速いわけじゃないから落ち着いて捻れる。良譜面 -- 名無しさん (2012-11-23 15 51 05) 地団駄抜けたと思えば不意にスライドさせられる箇所が忘れた頃にやってくるからコンボを切りやすい。このレベルのプレイヤーは交互踏みを心掛けているはずだから戸惑うと思う。 -- 名無しさん (2012-11-23 18 08 46) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/14204.html
草案 プレイヤーキャラ ルカリオ 名称不明(主人公) ブレイズキック必須 -- (ユリス) 2016-12-18 20 46 16 草案 バシャーモ 主人公 ブレイズキック必須 -- ( さなえ【ポケモン創作えほん】) 2023-03-31 16 32 11
https://w.atwiki.jp/kusoblog/
Master of Epic 通称MoEのつまらないクソブログをリストアップしていく非wikiです 荒らし対策のため編集不可能にしてあります MoEクソブログ クソブログと言えばそこら中に氾濫しています、読んでもちっとも面白くないブログの事ですね、 クソブログは特にネトゲ関係なんかにも多いです、MoEクソブログと言えばかなり多いですね。 そんなクソブログ達をどんどんリストアップしてクソ認定していこうという趣旨の非wikiです